■人格は変わるものである


シュナイダー「精神病理学序説」

 

人格とは, 人の精神的なもの全部をいうこともあるが,われわれは知性, 判断, 記憶のごとき知的能力をこれに算入せず, 精神的感情, 評価, 欲動, 意思だけを纏めて人格とする. 精神的 感情や欲動は人格に算入しても, 身体的感情や欲動はこれに加えない. 性格という言葉も人格と同意義に用いられる. 知能は人格に数え入れないので, 先天的精神薄弱は異常人格には数 え入れない.人格という概念には, 更に先天的なものという意味が加わっている. すなわち,素質的なものである.人格の特質には, 先天的特質が関係することは確かであるが,固定したものと 解すべきでない.  人格は発展するものである.この発展は, 一方には意識外の身体的基礎として人格の背後に考えられるものの展開の産物であり,他方には周囲の状況や体験の産物である.すなわち,人格は, 一方には児童は青年と違い, 青年は成人と違い, 成人は老人と違うというような生物学的基礎の変化に従って変化するが, 他方, 体験や教育の如何にも関係がある.ゆえに, 同じ生物学的過程も周囲の作 用の如何によって, 人格に対し全く違った結果を生ずる.

 

オイゲン・ブロイラー

「精神医学の基礎としての生活経験に関連した人格発達について(精神医学総論)」

 
 人格は遺伝された発育および反応準備性を基礎とし,同時に身体的発達および外界の体験,すなわち,生活経験と密接な関連を保ちながら発達する.人は自身の世界を能動的に形成してゆく.感覚が伝える生活経験の持続的な影響のもとで,全人格は先天的な傾向と反応準備性に基づいて発達する.生活経験(および身体的状態)の影響下で,われわれは死に至るまで自己を変えてゆき,しかも,常に先天的準備性の枠内で変化してゆく.信念・職業上の成功・主要なまたは副次的関心・個人的傾性・自己意識・基底気分は,成功,不成功によって,隣人との緊密な関係の有無によって,才能と力量を行使する可能性によって,強く影響される.

 

ディルタイ「世界観の研究」

 
大いなる生活気分の中で最も包括的なのは,楽天観と厭世観である.それはしかしさらに様々な色合いに分かたれる.かくて世界はそれを傍観者として眺める人にはよそよそしく見え,変転万化の見せ物として映る.これに反して,ある生活計画に従って秩序良く自分の生活を導いてゆく人には,同じ世界が親しく気楽なものとなってくる.彼は世界の内にしっかりと立っており,世界の一員である.これらの生活気分,世界に対する態度の無数の色合いが,諸々の世界観の形成に対する底層をなしている.