■カウンセリング-どのように自己を見つめるか-


1.自己確立のために

   「should」(今の状況で自分は何をなすべきか)と「want」(自分は何をしたいか)という2つの要素を把握することが必要である.この2つの要素の接点が,今後の方向を決めてゆくものである.

 

①これから何をしてよいかわからない場合

 ⇨ 周囲を見回して,問題意識を持つ.人のためになることを探す.

 ⇨ 経験豊かな人に教えを請う.(ルポルタージュ療法)

 ⇨ 行動を起こす.すなわち,社会の中で,自分の力で何かを経験してみる.

  アルバイトや ボランティア・一人旅などが適当である.

②目標はわかってはいるが,それに至る方法がわからない場合

 ⇨ 目標とする人のやり方,人生,技術を模倣する.

 ⇨ 1つのやり方に固執せず,複数の方法を試してみる.

③目標も方法もわかっているが,不安がある場合

 ⇨ カウンセラー,家族,友人などの他者に評価をしてもらう.

  これを通して,客観的に自己の考えを再検討してみる.

 

2.苦境に置かれた時の対策法

①他人と比較せず,自分の中で以前より進歩したと感じるところを自己評価する.以前の 自分と今の自分を比べてみる.

②「過去は原因ではなく,条件に過ぎない(フランクル )」のである.現在の状況を過去のせい にしない.また,過去の経験から得られたことを,現在に生かすように努力する. 

 (ex.暴力的な父親を反面教師にし,自分はよい親になる.)

③ポジティブな自己イメージを持つ.自分を嫌っていたり,さげすんでいれば,他人も自分 を評価してくれない.

 

3.自己受容

①完璧主義と負けず嫌いは葛藤を強くする.不完全や敗北にも耐える精神力を.

②失敗は,自分が向上するためのチャンスと考える.失敗を反省の機会とする.

③短所と長所は背中合わせである.短所は,いつでも長所に転換できる. 

(ex.せっかち→機敏で決断力がある,スローペース→慎重である)

④コンプレックスを克服するために,具体的に行動してみること.コンプレックスは本人の思い込みであることが多い.

⑤コンプレックスに固執せず,それを補償するものを身につける. 

(ex.ドイツ語が苦手なら,英語には堪能になる.)

⑥多様な価値観を持つことによって,自己評価は変わってくる.そのために,できるだけ 自分と異質な人と交流してみる. 

 

4.自己開示・オープンマインド

<効果的な自己開示の方法>

①相手が気分を害さないように,直接的な感情表現は避ける.

②相手の価値観を認めつつ,自分の価値観を伝える.

③自己開示は,状況にそって自然に行うこと.

④相手の求めている自分の内容を開示する.

 

5.役割を果たすこと

自分の役割を見つけ,それを果たすことによって,3つの利点が得られる.

 第一に,「自分は何をすべきか」ということにエネルギーを浪費しなくてすむ.

 第二に,役割には鎧としての効用があるため,社会的行動がしやすくなる.

 第三に,役割によって自分の意識が定まり,行動の一貫性が保たれる.

 どのような役割にも,それに見合った責任がある.自分の役割に対して,真剣に取り組むことが求められる.

 

6.対決を恐れない

①対決を避けることで,発言側には欲求不満が蓄積し,精神衛生上の問題が生じる. 

 一方,聞き手側にも,相手への期待外れの感が残ることになる.

②「憎しみ」と「支配欲」に基づく対決以外は,全て許される.

 相手の言動は批判しても 人格まで否定しないこと.

③効果的な対決に必要な条件としては,

 「失愛恐怖(嫌われるのではないかという恐怖)の克服」,「自己受容」,「幼児性から の脱却」,「欲求不満耐性」があげられる.

 

7.感謝の念

①感謝することで,自分も相手も幸福感を得ることができる.

②人間は,他者との関係があって存在している.感謝の念が乏しい人は,自分の人生の本質 に気づいていないといえる.

③相手からの感謝は,強く期待しないこと.見返りを求めて行動すると,関係性に無理が生 じてくる.

④感謝の念を表現する機会をこまめに見つけ,言葉と形にして伝えること.

⑤感謝の念はまず第一に家族へと伝えること.